白内障手術で失明

手術の失敗というには語弊がありますが、手術である以上、また、手術がうまく出来ても、ほかの理由で失明してしまう危険もゼロではありません。

白内障手術で起こりうる事象を紹介します。



【後嚢破損】

手術中に、水晶体を包んでいる袋の裏側(後嚢)が破れてしまうことです。平均すると100人中1人前後に起きまが、後嚢破損だけでは失敗とはいいませんし、失明もしません。

白内障の核を取り終わる前に後嚢破損が起きると、その破れ目から白内障の核が目の奥に落ちていってしまうことがあり、これを「核落下」と言います。落ちていった核は、通常の白内障手術では取り除くことが出来ないため、落ちていった白内障の核の量や大きさによっては、それを掻き出すための別の手術を受ける必要があります。

後嚢破損の破れ目が大きい場合は、その場で眼内レンズを入れると、眼内レンズが破れ目から目の奥に落ちていってしまう恐れが出るため、眼内レンズを入れないで手術を終わることがあります。多くの場合は手術後しばらく経過すると、水晶体の殻が落ち着いてきて、改めて眼内レンズを入れることが出来るようになります。




【チン小帯断裂】

水晶体は瞳の裏側でチン小体という線維で吊られています。このチン小帯が切れてしまうことをチン小帯断裂と言います。正常、チン小帯は強い線維なので簡単には切れませんが、時々チン小帯が弱い人がいて、どんなに慎重に手術をしてもチン小帯が切れてしまう人がいます。

ごく一部が切れただけなら通常と変わりなく手術を終わることができますが、広い範囲でたくさん切れた場合、水晶体の殻の支えが弱くなって、水晶体の殻の中に人工レンズを入れられなくなります。その場合は、後日落ちついてから人工レンズを目の中の壁に縫い付けるか、あるいは我慢してコンタクトレンズで対処します。



【駆逐性出血】 (駆出性出血、脈絡膜出血)

手術中、前触れなく突如として目の奥から出血が起きるもので、医師がどんなに気をつけていて突然起きます。一度出血が始まると、出血の勢いで眼球内の圧力が高くなり、それによって眼球の中身がメスの切り口から一気に飛び出してきて、失明かそれに近い状態になってしまい、回復を見込まない状態になります。

ただ、実際に起きる確率は数万人から数十万人に一人と言われており、ほとんどの医者は実例を見たことがなく,聞いたことがあるだけだと思います。


【術後感染症】(術後眼内炎)

問題なく手術終了して、良く見えるようになったにもかかわらず、手術中に目の中に残った菌が増えて、あるいは手術後に切り口の隙間から菌が入って、目の中が膿んでしまうものです。

数千人に一人に起こるといわれています。膿が強い場合は目の中の膿をあわてて掻き出す緊急手術が必要ですが、どこまで回復するかはさまざまで、良く見えるまで回復する場合もあれば、失明かそれに近い状態になる場合もあります。


【水疱性角膜症】

手術中に角膜を痛めて、細胞の数が極端に減ると、角膜の透明さが保てなくなってしまい、視力が極端に落ち、落ちた視力を回復するために、角膜移植を受けなくてはならなくなる場合があります。

その場合、数年前までは角膜全層を移植していたのですが、現在では、角膜内皮細胞の部分を中心に移植し、角膜移植の危険性もだいぶ改善しました。