白内障の手術の流れは大体以下のようになります。
手術前の準備
手術する眼を間違えないように,手術するほうの眼に印をつけます。印のつけ方は医師や病院によってさまざまです。
続いて点滴をつなげます(ルート確保)。
手術室では,歯科医院にあるような背もたれの倒れる椅子とか、平たくなった台の上に仰向けになります。
このときに、心電図をつなげます。この段階で点滴をつなぐ病院もあります。
そして数回に分けて痛み止めの目薬(局所麻酔)や,散瞳薬(瞳を開く薬)をさします。その後、手術する眼を消毒します。眼の周りの皮膚だけではなく、目玉自体も洗浄液をかけ流して、洗い流します。
顔に清潔な布をかぶせます。目をあけ広げる金具(開瞼器)で,手術をする目が閉じないように広げます。
目にまぶしい光をあてます。手術で細かいところがはっきりと見えるようにするためですが、このまぶしさで手術中の刃物などは見えなくなります。
麻酔をかける
基本的に局所麻酔の点眼液などで麻酔を行います。それ以外にも医院によってさまざまな麻酔方法があります。
黒目のふちを切り込みをいれる(切開方法)
黒目のへりをわずか2〜3mm程度切ります。
おおまかに「角膜切開」「強角膜切開」の二つの方法があります。このどちらを選ぶかは、医師によって違います。
どちらの方法でも、手術自体に大差はありません。
水晶体の殻をくり抜く(前嚢切開)
水晶体の殻をまるくくりぬきます。このことを、C.C.C.(continuous curvicular capslotomy)と言いますが、その方法には、ピンセットを使う方法と、針を使う方法があります。
水晶体の殻は薄く脆いので、そのくりぬき作業できちんとした円にならないことが時々あります。こういったものを不完全C.C.C.と言います。
また、 はじめからくりぬきをうまく作れる見込みが薄いときなどは、チストトーム(注射針を曲げたような道具)を使って缶切りのようにぎざぎざの切れ込みを作ることもあります。
水晶体の中身を、分離させる(嚢皮質分離・皮質核分離)
水晶体を、まだ剥いていない殻つきゆで卵に例えて説明します。 殻つきゆで卵(水晶体)の、殻(嚢)を傷つけずに中身を砕いて吸い出しやすくするために、殻と中身との間に水を回して、引き離します。
また、中身ををさらに取り除きやすくするために、中身の黄身(核)と白身(皮質)の間にも水を回して分離させます。
水晶体の中身を砕いて吸い取る(超音波水晶体乳化吸引)
白内障手術のメイン作業です。先端が直径1mm程度の筒(フェイコチップ)で、濁りを砕きながら吸い取っていきます。
方法としては、
・divide and conquer 法
(ディバイド アンド コンカー)
・phaco chop 法
(フェイコ チョップ)
・pre chop 法
(プレチョップ)
・一手法
などがあります。
それぞれに特徴があり、執刀医は自分に一番あった方法で手術を行います。
殻にこびりついた水晶体の中身のカスを吸い取る(皮質吸引)
超音波水晶体乳化吸引で、水晶体の中身の大部分はとることができますが、中身のカスをできるだけ取り除きます。
その中の一部は殻の内側にくっついているので、吸う力で引き剥がしながら取っていくのですが、殻まで吸い込んで穴を開けると後が大変になります(後嚢破損)。
無理やり剥がすのは禁物で、殻に傷をつけそうな場合には、多少のカスは残っていても手順を終わりにします。カスが残っていても、手術直後の視力には影響はありません。
眼の中に眼内レンズを入れる(眼内レンズ挿入)
直径6mmのレンズを、3mm前後の切り口から入れます。
やわらかいシリコンやソフトアクリルのレンズを、二つ折りにしたり、丸めて筒状にして入れます。直径6mmのレンズでも、二つ折りなら3.5mmくらいの切り口で、また丸める方法なら2.4mmくらいの切り口で入れられます。
黒目のへりの切れ込みを閉じます(創口閉鎖)
最近では、以前の白内障手術と違って切り口が小さくなったので、縫わないでそのままにしておく方法が増えました。
以前の切り口よりも断然小さい3mm程度の切り口なら縫わなくても自然に閉じるということからです。
念のため縫ったとしてもほとんどの場合1針です。